Communication: Topic and Outline
フランシス・フクヤマ著 ポピュリズムと「歴史の終わり」について
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>>> 当院論評 Comments By Chiba
前回からコロナにも関連しながら、その先の世界に触れたいと思い、最近、講談社現代新書から出版されている「新しい世界」「世界の賢人16名が語る未来」としてコロナ禍後の世界を予測した生き方を考えたいと思っています。ただし賢人と言えども「当たらぬも八卦」と思ってください。
なお、16名の賢人とは既にお馴染みの方々です。①ユヴァル・ノア・ハラリ ②エマニュエル・トッド③ジャレド・ダイアモンド④トマ・ピケティ⑤マイケル・サンデル⑥ナオミ・クライン等々
第3人目は:フランシス・フクシマ氏(歴史の終わり」を主著としています。
これまでこのC項で取り上げてきた講談社・現代新書「新しい世界:世界の賢人16人が語る未来」の中から経済学者「トマ・ピケティ」を取り上げます。タイトルは「ビリオネア(百万長者)をなくす仕組み」としています。この意味は、格差をなくすには、一人に富が偏らない様な仕組みが必要との考えを述べていることです。
期しくも、2年前、NYのマンハッタンにデモが起こり、かれらは「1%の富裕者が残り99%の人々を支配するのか」と訴えた。同時期に、ピケティは「資本主義は放っておけば格差が広がる」との警告をその著書の中で訴えていた。
当時、当方は、「渋沢栄一」BOOK3(英語版)を書き上外国人講師にproof readingをお願いしつつあった。そして、近く、Amazon社を通じて、これを世界に出版する予定でいる。渋沢は当時(明治初期)日本に資本主義を取り入れようとしていた彼は、その後、「資本主義をそのまま取り入れたのでは、『弱肉強食』の世界にしてしまう。」と考え、「論語と算盤」と題して著書を出した。この本の趣旨は、単にそろばん(資本主義)を取り入れるのではなく、論語(儒教精神)を取り入れるべきとした。従って、当方も出版に際しては、改めて、このことを紹介する予定である。
トマ・ピケティの紹介:1971年フランス・クリーシー生まれ。パリ経学校・経済学教授。
2年前の主な著書:「21世紀の資本」および、最新著書「資本とイデオロギー」が出版され、世界的な話題になっている。いずれも千ページを超す著書である。内容は、いずれも不平等が拡大するメカニズムを解きあかしている。
以下はピケティ本人がフランスメディア「ロプス」の取材に答えたのインタビュ―をまとめ紹介する。
(1)長期の視点から徹底分析されるのは「格差が生まれる仕組み」である。どんな格差も「自然」にできるものではない。従って、その格差がどの様に正当化されているか分析されている。ピケティに言わせれば、どんな社会の仕組みも永久に続くわけではない。どの様にすれば格差を縮小化できるのか。どの様にすれば資本が少数の手に集中しなくなるのか?新しい社会の仕組みをどんどん創造していくべきだと言う。
そろそろ、「私有財産は神聖不可侵」と考えるのをやめるべきだというのがピケティの持論だ。新著の後半では、これから進むべき道がいくつか示されている。
例えば、ドイツに倣って労使共同決定を導入すれば、「私有財産の社会化」が図れるという。また、資産に対する課税を実施し、その税収を財源にして25歳になった若者にまとまった額の資本(例えば、1500万円ほど)一律に支給する制度も提案している。これは「私有財産の時限化」を狙ったものだ。これは左派に刺激と活力を与えられる、「参加型の新しい社会主義」なのかもしれない。
(2)彼の著作「21世紀の資本から、2つの弱点について
ピケティの意見:前著の「21世紀の「資本」が出てから、たくさんのことを学ばせて頂きました。ほとんど何も知らなかった国に招かれ、大勢の研究者と出会い数百の討論会に出席しました。そのような意見交換を経て私の考えも新しくなったんです。
前著の「21世紀の資本」の内容は、」大雑把に言うと、「20世紀は19世紀の格差を引き継いで始まったが、二度の世界大戦を経て格差が大幅に縮小した。」と言うものでした。
1980年代以降、格差の再拡大が始まっている不安要素も指摘しました。
ただ、あの本には2つの弱点があったんです。第1の弱点は、極めて西洋中心の記述だったことです。今回の本では目線を広げました。もちろん今回も「貴族・聖職者・労働者の3身分で構成されていた社会」が、どの様にして「有産者の社会」に移行していったかを記しています。
しかし、今回はその他にも、奴隷制の社会、植民地社会、共産主義体制の社会、ポスト共産主義体制の社会、インドのカースト、ブラジル、中国、ロシアなども調べました。
前作のもう一つの弱点は、格差の成り立たせるイデオロギーについて触れられていなかったことです。このブラック・ボックスを今回、」開けてみました。そんなことをしたので、ページが増えてしまいました。
(3)格差正当化「神話」を見破る
新著では時代を追いかけながら、格差を正当化するイデオロギーがどの様に変遷していったかが非常に長く書かれています。ただ、この歴史の記述は、一種の回り道であり、ピケティが言いたかったことは、今からでも、別の社会制度に移行するのは可能であると言うことの様に思えた。今とは異なる社会制度を望むのは世間で思われている程、絵空事ではない。
ピケティの意見:これまで、「格差等ジーム」にどの様なものがあったか、その歴史を書いています。結論として出てきたのは、支配的なイデオロギーが見かけより脆いということだ。格差を作るのは、政治です。経済やテクノロジーが「自然」に格差を作り出すわけではない。だから、どの社会にも、「なぜ、格差があるのか?」を説明する物語が必要になってくる。社会の階層化を正当化し、財産権や国境、租税や教育の仕組みを至当かする物語も必要です。そうしたことに関する過去のイデオロギーの歴史を知ると、現在のイデオロギーも距離を置いて見られます。
わたし達は過去の時代の格差について不公正で専制的と思込みがちです。一方、現代の格差については、能力主義の結果であり、活力の源泉であり、閉鎖的な所がないと思い込みがちです。私自身はそういう見解を一言たりとも信じません。
資産額にゼロを何個連ねる資産家を、フランスのマクロン大統領は「ザイルパーティの先頭に立つ人」と称賛します。アメリカのトランプ元大統領も「雇用創出を担う人」と褒めます。昔は宗教の言葉が格差を受け入れましたが、、大統領のこうした言葉はその意味で「宗教的」なのです。
(4)私有財産と言う宗教:19世紀は「財産格差」の黄金期であった。
ピケティの意見:フランス革命前の身分制社会は宗教的原則にはっきり基ずいていた。
一方、革命後に成立した「有産者の社会」では、従来の宗教に代わって、私有財産が神聖不可避なものとして尊重されました。そこには、一種の高所恐怖症のような恐れがありました。一度、財産権を俎上に載せたら、とどまる所を知らない事態を招くのではないかと言う恐れがあったのです。パンドラの箱を開けるのを恐れるあまり、どんな蓄財でも正当化されることになりました。犯罪的な蓄財も正当化されたのです。例えば、19世紀、国家が奴隷制度を廃止した時、国家は奴隷の所有者にわざわざ損失補償をしています。奴隷の方に賠償金を払うのでなく・・。フランスの国王シャルル10世はフランスに反旗を翻したハイチにフランス人元奴隷所有者への賠償金を支払わせたのです。その結果、ハイチは巨額の債務を負い20世紀まで、ハイチ経済にとっての足枷となったのです。
フランス革命の失敗:
当時、フランスの全私有財産の内、「上位1%の最富裕者層」と「下位50%の貧困層」の保有する割合:1900年までは約50%:3% 2000年以降:23%:7%
このことは、】フランス革命は格差解消に失敗したことを示している。
以上
来月に続きます。
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